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「もう一人後から来るかもしれませんが、そしたらよろしく頼んます」
房一は満足げに、かへつて来た犬の頭をかるくたゝいた。
と、その小柄な身体から出るとはとても思へない、幅のある、濁だみ声で云つた。
「あら、ほんとうに沢山とれたんですね」
さう云つたのは庄谷だつた。房一がその方をふり向いた時、庄谷の白味がちな小さな眼が意味ありげに更に細くなつたところだつた。そのまゝにやりとして、
「それに、永い間この土地をはなれていたもんですから、土地の事情にもすつかり疎うとくなりましてね、これは一つ、どうしても今後こちらのお力にすがらないことには立つていけないと思つている次第ですが――」
その直造の耳には、次のやうな言葉が響いて来た。
最後に行つた家は河上の小一里るある辺で、そこいらは人家は数へるほどしかなく、河つ縁ぷちに沿つた段々畑の中を幅の広い国道だけがほの白く浮いて、次第下りに河原町の方へつゞいていた。軽くペタルを踏むだけで、彼の乗つた自転車は半ばひとりでに快い同じ速度で走つた。
練吉はもうさつきから殆ど一人でぐいぐいやつているにもかゝはらず、むしろ青い顔だつた。
房一は目を上げて注意深く道平を見た。
「まあ、葉書でざつと町内に出しときましたがね」
「はあ、それは――」
「うむ、さうか。玄関のことか」
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